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分娩前後でのカシューナッツ殻液製剤の給与事例
~血中β-ヒドロキシ酪酸(BHBA)濃度への影響~

技術事例/使用事例

2021/6/22

前回(3月コラム)は、生理的に“負のエネルギーバランス(NEBAL)”に陥りやすい、分娩前後における血中遊離脂肪酸(NEFA)濃度についてお話しました。今回は分娩後に注意をしたい、潜在的な血中ケトン体濃度の上昇についてお話しいたします。弊社では、乳牛へのカシューナッツ殻液製剤の評価試験において、カシューナッツ殻液製剤を給与していない乳牛に比べて、給与した乳牛ではルーメン内のVFA(揮発性脂肪酸)濃度が高かったという事象を確認しています(図1)。
(実施場所:山形県)※出光興産実施データ

そのため、分娩前後のエネルギー不足に陥りやすいステージにおいても、ルーメン内のプロピオン酸などのエネルギー源(VFA)を維持することができれば、乳牛のエネルギー充足に役立つのではないかと仮説を立て、分娩前後の乳牛における血中のβ-ヒドロキシ酪酸(BHBA)濃度に着目したカシューナッツ殻液製剤の給与試験を実施することにしました。BHBAは、エネルギー不足状態などで糖が欠乏したときに肝臓で作られるケトン体の一種で、獣医師がケトーシスの診断を下す際の有効な指標の一つにもなっています。また、血中BHBAを測定することによりエネルギーが充足されているかを推測することが出来ます。近年の研究では、分娩後の血中BHBAが1.2mmol/L以上を示す個体が15%以上を占める牛群では、エネルギー不足を警戒する必要があると言われています(Ospina et.al.,2010など)。

【カシューナッツ殻液製剤の給与試験】
カシューナッツ殻液製剤を給与する牛を15頭(給与群)、給与しない牛を15頭(対照群)用意しました。給与群には分娩前後21日間(計42日間)カシューナッツ殻液製剤を給与し、各群の分娩前後の血中BHBA濃度を比較しました。図2に示すように、対照群と給与群の間で、分娩前のBHBA濃度に差はありませんが、分娩後は両群の数値に差が見られました。対照群ではBHBA濃度が分娩前より0.52mmol/L 上昇して1.17mmol /Lになりました。一方、給与群では分娩前より0.23mmol/L 上昇して0.78mmol/Lとなり、対照群より低い値でした。
(実施場所:岐阜県、試験協力:NOSAIぎふ)※出光興産実施データ

このうちBCSが3.5以上の過肥牛に絞ってみてみると、前回お話ししたNEFA同様にその差が表れました(下表)。
(実施場所:岐阜県、試験協力:NOSAIぎふ)※出光興産実施データ

今回は分娩前後でのカシューナッツ殻液製剤給与による血中BHBA濃度への影響をご紹介しました。
いかがでしたでしょうか。

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