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「もう一口食べたくなるお肉」を目指して
~山形県 有限会社山口畜産 様~

ユーザーの声

2022/12/15

山形県最上郡最上町で最上牛の生産を行っている有限会社山口畜産(以下、『山口畜産』と表記)について、常務取締役獣医師の山口聡さんに、農場のこだわりと今後の目指したい姿についてお話を伺いました。山口畜産様では、農場内に併設の食肉販売所を構え6次産業化を実現されており、全国でも有名な自社ブランド「最上牛」を展開しています。東京の銀座にこだわりの焼き肉店をオープンし、和牛生産にとどまらず、消費者へその思いを届ける姿勢についてもしっかりとお話を伺いました。
―本日はどうぞよろしくお願いいたします。



農場のこだわりについて

―農場経営のこだわりについて、まず『子牛育成』について教えて下さい。
はい、一言で言いますと、肥育しやすい子牛作りをめざしています。当農場では自家育成の子牛は基本的に市場へ出さずに、自農場で肥育も行っています。そのため、目指す肥育牛を作り上げるためにも子牛育成はとても重要視しています。
―なるほど、具体的にはどういった子牛作りを目指しているのですか?
子牛の骨格がしっかりしている状態でかつ、ルーメンが発達していて、「健康で、丈夫な牛」を育てることを第一に考えていますね。エサはチモシー、ビール粕、配合飼料をバランスよく配合し、TMRとして給与しています。育成では、体重が重すぎず、軽すぎず、丁度良いサイズを意識していて、去勢ではDG1.1、雌では1.0を目指していますよ。 )

(日当たり良好で綺麗な事務所内にて、山口聡さんにお話をお伺いしました)

―具体的にありがとうございます。子牛育成の重要性が伝わってきました。肥育期でのこだわりについても是非、教えてください。
当農場では、「もう一口食べたくなるお肉」づくりを目指していて、自社ブランドである「最上牛」を展開しています。この理想の牛づくりは、「繁殖」「肥育」「リサイクル」「食肉」の徹底した一貫体制で可能になると考えています。飼養管理面では、15ヶ月齢から、分離給与を開始し、稲わらと配合飼料でじっくり育て上げ、肥育後期には山形のお米をエサに混ぜていて、こだわりの1つですね。『ふっくらライス』という名称で、お米を発酵させ、1日1頭当たり200g給与することで、肉のうまみ、風味がよくなっていますね。

(肥育後期の牛へ給与している山形県産の発酵させたお米)

―牛を生産する繁殖から、リサイクル、最上牛の販売、そして飼料まで全て関わっているからこそ、こだわりがつまったお肉に繋がるということが良く分かりました。山口畜産さんの最上牛を食べられる店舗があると聞いているのですが、教えてください。
「もう一口食べたくなるお肉」を目指し、こだわりをお客様に直接発信するために、昨年東京の銀座に焼き肉店(「焼肉Coco Nemaru Ginza」)をオープンしました。是非、機会がありましたらご来店ください。

(洗練された店内で、こだわりのお肉(最上牛)が提供されている※写真は山口畜産様ご提供)
お店情報はこちら→「焼肉Coco Nemaru Ginza」 

現状のお悩みについて

―話題は変わりますが、現状のお悩み(抱えている問題)について教えていただけますか?
現在、直面している悩みは大きく3つあります。
一つ目は飼料価格の高騰です。経営を圧迫しているので可能な限りコスト削減努力をしています。ただ、牛に給与する飼料は確り拘る必要があって、安価で低品質なものは使わず、高くても品質のよい餌を選んでいます。

(高品質な粗飼料を食べる牛たち)

二つ目は堆肥処理についてですね。こちらも皆さん同じ悩みを抱えていると思いますが、頭数が多いと処理に苦労します。完熟堆肥はホームセンターへの出荷や、東北中央道の法面に使用されている実績もあるんですよ。以前は戻し堆肥を敷料に使用していたのですが、感染症が発生してしまい、やっぱりコントロールが難しいとの判断で使用を中止しています。堆肥処理、再利用の面で、革新的な技術進歩を期待しています。
三つ目は敷料不足についてです。牛飼いの皆さんと共通の課題だと思います。牛床にはオガクズを利用していますが、仕入れ価格が高騰しているのと、本当にモノが手に入らなくなっていて厳しいです。
―全て厳しい問題と感じました。他の生産者の皆様も同じ問題を抱えていると思いますし、特に1つ目の飼料高騰については今後どのように推移するか、とても気になる問題ですね。

カシューナッツ殻液製剤について

―カシューナッツ殻液製剤使用の経緯や使用感についてお聞きしてもよいでしょうか?
最上町は秋~冬の寒暖差が大きいエリアなので、もともと離乳後の子牛で鼓脹症や胃潰瘍が原因で年間4~5頭子牛の死亡が発生していて問題視していました。要因は恐らく、離乳後の飼料変更や、エネルギー不足、ストレス等が相まってルーメン環境が乱れていたことだと考えていました。
そこで、MPアグロ株式会社山形支店の菅原さんからルミナップをご紹介いただき、ルーメン環境の安定化を目的に令和2年の秋から使用を開始しました。
―いつもご使用いただきありがとうございます。実際に、ご使用された結果はいかがでしたでしょうか?
使用した結果、変化を大きく実感しているポイントが2つありました。 
一つ目は、子牛の死亡頭数の減少です。二つ目は育成牛の増体が良好になった点です。あわせて発育不良の子牛が少なくなりました。

(写真:カシューナッツ殻液を給与している子牛育成舎の様子)

一つ目の子牛の死亡頭数についてはデータをとっていて、給与を開始した令和2年から少なくなっている傾向がありました。特に鼓脹症での死亡頭数はゼロとなっており、前評判通りと感じました。

(オレンジ色の網掛け年度はカシューナッツ殻液配合製品給与年度)

二つ目は増体成績についてですが、こちらも顕著な変化を捉えていますよ。去勢、雌ともに育成牛のDG推移をずっと記録しているのですが、給与を開始した令和2年秋以降のDGが去勢、雌ともに右肩上がりに推移していて、カシューナッツ殻液配合製品給与による変化ではないかと感じています(以下図、黄色網掛け時期はカシューナッツ殻液配合製品を育成牛に給与を継続)。

最後に、カシューナッツ殻液配合製品のマッシュタイプ製品を使用していて、決して嗜好性は良くないですが、他の添加剤を振りかけた後に製品を振りかけると問題なく食べていますね。使用感としては問題ないですよ!
―このような定量的なデータでお示しいただき、ありがとうございます。また、大変良好な事例で大変恐縮です。給与いただいた結果、子牛の死亡数の減少と増体維持の両面で貢献できていることを直にお話を伺えて大変嬉しく思います。

最後に

―山口畜産が今後目指す姿について是非、お聞かせください
目指したい姿としては3つあります。
1つ目は、冒頭でもお話をしましたが、「もう一口食べたくなる牛」づくりにこだわることです。自社ブランドである「最上牛」をもっと広めていきたいと考えています。

(出荷を控えた約30ヶ月齢の立派な最上牛)

2つ目は、将来自家育成の比率を高め、自家育成と素牛導入の比率を5:5にしたいと考えています。現在は月間120~140頭の肥育牛を入れていますが、そのうち自家育成と素牛導入比率は3:7程度ですね。当社では、「子牛生産が全ての要」であるというのを方針として掲げていて、1つ目の、「もう一口食べたくなる牛」づくりを実現するためには、子牛の管理が極めて重要となるので、自家育成にも力を入れていくことを考えています。
3つ目は、昨今も話題になっている環境負荷低減への貢献です。会社として社会的な課題の解決に対しても、意識的に取り組んでいく必要が有あると感じています。ただ、今は、全国的に見ても環境対策に対して大々的に取り組んでいる農場は殆どないと思います。具体的には、牛のゲップから出るメタンや堆肥から発生する一酸化二窒素などを含む温室効果ガスの削減の取組みです。

(牛に対して常に優しく接していた山口さん)

―3つ目の環境負荷低減については、関心が高まりつつある内容と思いますが、どのような課題がありそうでしょうか?
最もネックとなるのはコストだと思います。温室効果ガス削減のコスト負担を全て農場に任せるのではなく、国、消費者、生産者、業界に関わる皆で負担する仕組みが必要だと思っています。
次にネックになるのは、牛で言えばメタンガスの測定技術ですね。農場で、誰でも、気軽に、簡単に、とはいかないのが現状で、現場で簡易的にある程度精度が高く測定可能な技術があれば理想ですね。
海外の事例でいうと、オランダでは牛のゲップに含まれるメタンを抑制する製品を販売する会社があり、その製品を使用した生産者が育てたお肉がスーパーの店頭に並ぶ際、脱炭素に対する評価が数値化されて製品に記載されている例もあるようです。
―海外では実際にそのような事例まであるのですね。消費者の方々の関心も高いということですね。
現場のこだわりを環境配慮した生産物として価格転嫁している事例もある。カシューナッツ殻液配合製品も今後、牛からのメタンガス削減の訴求ができれば生産物への環境配慮という価値をつけた展開が出来るものと期待していますよ!

(写真:農場のシンボルともいえる事務所前の七福神の石像の前で)

―本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
(取材対応:㈱エス・ディー・エス バイオテック田森)

農場内併設の食肉販売所について

(食肉販売所の外観写真)

(店内には、最上牛の様々な部位のお肉が並んでおり、一般の方向けに販売されています)

(直売所内にて、職員さんの手でつくられる正真正銘の手ごねハンバーグ)

■農場の概要
農場名 有限会社山口畜産
代表者 代表取締役 山口 登
①事業の目的
 肉用牛の生産・販売、牛肉の販売、堆肥の販売
②飼養頭数
 肥育牛(黒毛和種)約3,000頭
 繁殖牛(黒毛和種)約700頭
 (山形500頭、沖縄山口ファーム200頭)
③主な施設
 牛舎30棟
 堆肥リサイクル施設7棟
 食肉販売施設1棟
 焼き肉店1店
④従業員等
 42名(役員4名、従業員38名)
⑤設立年
 1983年
経営の特色
・効率的な肥育経営のために、肥育牛(黒毛和種)の出荷月齢の目標を30か月齢としている。
・肥育部門で生ずる家畜排せつ物については、堆肥製造資材として関連会社の有限会社山口畜産
リサイクル部へ供給し、有機肥料等として製造・販売し環境保全型農業を推進している。
・地元の最上家畜市場での肥育素牛購買や牛肉の販売を通して地産地消を推進している。
■農場の歴史
創業1983年、ホルスタインの肥育からスタート。
その後、F1肥育もスタートさせ、BSEをきっかけに和牛肥育を開始。
2000年代に入り、肥育専業であったものの、和牛繁殖をスタート(最初は40頭から)。
現在は山形県内で繁殖牛500頭、肥育3000頭を飼養する規模にまで拡大。

詳細は是非、山口畜産様のウェブぺージをご覧ください。

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