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ヨーロッパのレストランが提案する
サステナブルな飲食業のあり方

環境への取組

2023/8/7

地球全体に大気汚染や異常気象など、さまざまな変化をもたらす気候変動。地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの全排出量のうち、実は、食糧の生産を由来とする温室効果ガスは全体の3分の1とされます(※1)。そこで私たちは、食由来の温室効果ガスの排出量を減らすよう配慮した食生活を選択するライフスタイル「クライマタリアン」の考え方を広めるため、「Climatarian.jp」というWebメディアを運営しています。

今回は、世界で気候変動への意識が高まりを見せるなか、消費者のニーズの変化に合わせて生まれたサステナブルな飲食業の事例をご紹介します。

サステナブルな食のあり方に対する消費者意識の変化

いま、消費者の気候変動に対する意識やニーズが高まっています。世界29か国を対象に行われた調査(※2)によると、46%が気候変動への懸念からリサイクルやごみの分別、コンポストの実践というアクションを取っており、41%が食べ物を捨てないよう心がけて生活していると明らかになっています。
日本国内においても、気候変動に対する生活者意識調査(※3)で、回答者の半数近くが「常にフードロスを出さないように行動している」とし、「常にではないができる範囲で取り組んでいる」という層も合わせるとその総数は8割以上にのぼります。
消費者の気候変動への意識が高くなっていること対し、畜産業をはじめ飲食業に関わる業界では、どのようにして消費者のニーズに応えることができるでしょうか。
そのヒントは、ヨーロッパを筆頭とする環境先進国での取り組みにあります。
先進的なレストランによるフードロスの削減やメニューごとにCO2排出量表示するといった活動が、世界各国でじわりと広がりつつあります。さらに、サステナブルなレストランの取り組みを後押しする評価システムやレストランレビューサービスの展開も進んでいます。実際の事例を見ていきましょう。

ファストフードからミシュラン星獲得レストランまで
最先端のグリーンな取り組み

環境意識の高い顧客のニーズに応えるレストランに共通するのは、食材やメニューにかかる温室効果ガスを「見える化」することです。
例えば、アメリカで展開するサラダチェーン「Just Salad」では、各サラダメニューにそれぞれのメニューの温室効果ガス排出量が記載し、消費者に明確で分かりやすい情報提供がなされています。
温室効果ガス排出量の記載は、メニューのレシピが固定されているファストフードに近い業態で導入しやすいと考えられています。しかし、ヨーロッパでの事例はそれにとどまりません。
イギリスの「The Bristol」というカジュアルなビストロでも、全メニューの温室効果ガス排出量を記載する取り組みが始まっています(※4)。そのほか、フランスの「La Table de Colette」というレストランでは、提供するディナーコースの温室効果ガス排出量を一定に制限することや、サービスの過程で発生させた炭素をオフセットする方法で環境へのコミットメントをゲスト(顧客)に示すという方法を取っています(※5)。
ミシュランガイドに掲載され、数万円を超えるコースを提供する高級店でも、消費者の環境意識に寄り添う取り組みが選ばれているのです。
また、地産地消にこだわりながらフードロスを減らしたり、生産における温室効果ガスの排出が低減された食材を活用したりするなど、さまざまな取り組みを組み合わせることもトレンドになりつつあります。
ゼロウェイストの取り組みにおいて、パリで存在感を示すのは、廃線駅舎と線路を利用して生まれた「La REcyclerie」。レストランでは旬の野菜や近隣から集められた食材で構成されたメニューが提供されるほか、DIYシェアスペースや、レストランから出た生ごみのコンポストを活用する菜園を運営しています(※6)。
循環型経済都市を目指すアムステルダムに位置する、創造的かつ革新的な料理を提供するレストラン「Mediamatic ETEN」では、小規模な独立農家から供給される地元産食材の活用のほかに、独自の視点として保存期間のエネルギー消費を最小限に抑えることを目指した発酵の実験なども行われています(※7)。

サステナブルレストランを後押しする評価システムの広がり

ご紹介したようなレストランサイドでの取り組みと同時に、その活動を評価し、後押しする枠組みも生まれてきています。
まずご紹介したいのが、「ミシュラングリーンスター」です。日本でもお馴染みのミシュランが、上質な料理を提供するレストランにスターを付与してきたのと同様に、食事と文化の関係を考察しながら持続可能性に配慮するガストロノミーレストランに対し、グリーンスターを付与する取り組みです。
そのほか、ヨーロッパでは各国でレストランのサステナビリティ評価サービスが次々と登場しています。地産地消や旬の食材の活用、ゼロウェイストなど、各レストランがどのような取り組みをしているのかを可視化させ、消費者が外食先を選ぶ際の参考にしてもらおうとするサービスです。例えば、フランスでは「ecotable」や「FIG」というサービス、ドイツでは「greentable」、スウェーデンの「U&We」などが地位を確立しています。

どう変わる?日本のサステナブル飲食業の未来

サステナブルなレストランと、それらを取り巻く動きが同時多発的に起きていることは、生活者の環境意識の高まりを受けた必然的な流れともいえます。私たちは、これからの時代の食文化のあり方を問い、築く最中にいるのです。
日本の飲食業でも、少しずつ新しい取り組みが始まっています。グルメレビューサービス「食べログ」では、各飲食店についての環境や社会に対する取り組みを記載する欄を設け、レストランの積極的なサステナビリティへの取り組みを後押しするサービスを2023年5月に開始しました(※8)。
また、イギリスのサステナブルなレストランの取り組みを評価・認証する団体SRA(Sustainable Restaurant Association)は2018年に日本支部を立ち上げ、日本にあるレストランのサステナビリティ評価を行なっています。
消費者の意識が少しずつ変わり始めているいま、日本でもこうした動きがより加速していきそうです。それにより、提供するメニューの原材料が環境にどう影響しているのかに強い関心が集まっていくことが考えられます。
畜産業界においても、よりサステナブルな選択肢が求められると同時に、畜産者が取り組む環境への配慮がきちんと評価される未来が、すぐそこにまで訪れているかもしれません。

記事協力:Climatarian.jp(クライマタリアン.jp)
Quisineが運営する、食と気候変動の関係についての情報発信や、地球にやさしい食材の選びかたなどの情報をお届けする、おいしいと地球をつなぐウェブメディアです。

【出典】
※1 UN News| Food systems account for over one-third of global greenhouse gas emissions | UN News
※2 Ipsos |CLIMATE CHANGE + CONSUMER BEHAVIOUR
※3 メンバーズ|気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識調査(CSVサーベイ2022年10月)
※4 euro nesws| Climate change on the menu: UK restaurant is first to show customers CO2 emissions of their foodThe Canteen
※5 La Table de Colette|ECO-RESPONSABILITÉ
※6 HILLS LIFE|廃線跡地の環境配慮型複合施設がパリジャンの日常に定着した理由
※7 IDEAS FOR GOOD|食を通してサステナビリティを体感しよう。各国のレストランが今取り組むこと【欧州通信#14
※8 食べログ|環境や社会に対する取り組み

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