COPとは?
畜産業に与える影響やビジネスチャンスを解説
環境への取組
2024/1/9
UAEで開催されていたCOP28が閉幕しました。COP28では、農業が関係する「エミレーツ宣言」が採択され、日本の畜産業にも影響する可能性があります。そもそも「COP」とは何なのか?から、脱炭素キャスターの千種ゆり子が解説します。
そもそもCOPとは?
今年のCOPは2023年11月30日から12月13日の期間にUAEのドバイで開催されました。
COPは”コップ”と読み、COPは「締約国会議」(Conference of the Parties)の略語です。さまざまな国際社会課題それぞれに対して「締約国会議」が存在しますが、最も有名なのが、今回取り上げる「気候変動に関するCOP」。気候変動枠組み条約に加盟する198の国と地域が参加しています(*1)。
COPは、新型コロナの影響で延期された2020年を除き、1995年から毎年開催されています。「COP」のあとに続く数字は、「何回目のCOPなのか」を指しています。日本でも1997年に京都でCOP3が開催され、「京都議定書」が採択されました。
COP28と農業・畜産との関係は?
今年、COP28はアラブ首長国連邦のドバイで開催されましたが、その期間中に、食料・農業分野の持続可能な発展と気候変動対応の強化を目的とした「エミレーツ宣言」が採択されました。各国が、食料・農業分野の持続可能な発展と気候変動対応の強化を目指して、イノベーションの推進など、行動を強化していくことに合意しました。(*2)
中でも私が注目しているのは、食品ロス・温室効果ガスの削減です。
WWF(世界自然保護基金)と英国の小売り大手テスコが2021年7月に発表した報告書(*3)によると、世界で生産された食べ物の40%近くにあたる25億トンの食品が捨てられていることがわかりました。
食料生産には、多数のエネルギーや資源が投入されていますから、食品ロスを削減できれば、エネルギーや資源を節約することに繋がり、それはつまり温室効果ガスを削減することにもなります。
日本は“メタン削減先進国”?!技術輸出に期待も
畜産業との関係では、牛のげっぷに含まれるメタンガスを考えなければなりません。
メタンをめぐっては、国際的な枠組みとして、グローバル・メタン・プレッジが発足しています。2021年の主要国経済フォーラムにおいてバイデン大統領から言及され(*4)、2年前のCOP26で発足したものです(*5)。
この枠組みは、具体的な削減目標を定めたものではないものの、世界全体のメタン削減に向けた機運を高める効果が期待されています。
日本国外務省などによれば、2019年度の日本国のメタン排出量は、2013年度と比べて約5%削減を実現しており、メタンの総排出量としても、アメリカの約23分の1、EUの約15 分の1と、日本のメタン削減は既に一定の効果をあげているとも言えます。(*6)
裏を返せば、日本のメタン削減の知見を、海外のメタン削減支援に活用していくことが期待されていて、そこにビジネスチャンスがあるとも言えると思います。
特にカシューナッツ殻液によるメタン削減は既に研究や実績が蓄積している技術です。カシューナッツ殻液を使用した飼料を給与することで日本だけでなく海外のメタン削減にも貢献できると考えます。日本の飼料技術が世界の温暖化対策として技術輸出される可能性があります。
(*1) UNFCCC Parties (May 2023)
(*2)COP28における食料システム・農業に関する首脳級宣言 (2023/12/1)
(*3)WWF DRIVEN TO WASTE: GLOBL FOOD LOSS ON FARMS REPORT SUMMARY (July 2021)
(*4)JETRO ビジネス短信「バイデン米大統領、気候・エネルギー主要国経済フォーラム開催、2030年までにメタンガス30%削減目指す」(2021/9/21)
(*6)外務省、農林水産省、経済産業省、環境省「グローバル・メタン・プレッジ(GMP)に係る考え方」(2021/9/25)
コラム執筆:千種ゆり子(気象予報士&防災士、Quisine発起人)